もっと、いいものを。
湯町釜 福間琇士さん
湯町窯だからこそ手に入れられるもの
玉造温泉駅から歩いて5分のところにある湯町窯。ここで大正時代から続く伝統的な陶芸品を作っている福間琇士さん。お店の中に入って驚いたのが作品の多さと、色鮮やかさだった。360°全てに作品が並べられており、その一つ一つに黄色やピンクなどの鮮やかな色で綺麗な模様が描かれていた。この陶芸品に鮮やかな色で模様を描く技法は日本独自のものではく、海外からの技術だった。昭和初期にイギリスの陶芸家、バーナード・リーチ氏が湯町窯を訪れた際に直接教わったものだ。そのため湯町窯さんの作品には日本古来の奥ゆかしさだけでなく洋の美も表れていた。また、福間さんは沖縄の有名な陶芸家の下へ修行に行ったこともあった。多種多様な手法を取り入れ、ここだけの、湯町窯だけの、作品を作りたい。福間さんはそう語った。
継続がもたらした変化
そんな素敵な作品を数多く生み出してきた福間さん。しかしもともと焼き物に興味があったわけではなかった。ただ長男だったから、昔は長男が家業を継ぐものだったから、家業を継いだだけらしい。「昔は今のように便利な設備もなければ、良い粘土が簡単に手に入るわけでもなかったんです。苦しいこともたくさんあったけど、それでも続けていくうちに楽しくなって、お客さんが来てくださったり、喜んでくださったりすると、ああやってきてよかったなって思うんですね。」と言って、福間さんは照れくさそうに笑った。
もっと、いいものを。
「一番のお気に入りの作品っていうのはまだないかな。」素敵な作品に囲まれたお店の中で、福間さんはそう話す。しかし、それは決して自身の作品に愛着がないわけではなく、もっといい作品を作りたいという熱い思いからくるものだった。いろいろな作品を作りたい。けど、妥協はできない。手抜きはしない。一つ一つの作品に全力を注ぎ、丁寧に、力強く仕上げていく。その向上心が原動力となり、福間さんはこれからも挑戦を続けていく。
【データ】
島根県松江市玉湯町湯町965
営業時間8:00~17:00(平日)/9:00~17:00(土日祝)定休日なし
0852-62-0726
【編集後記】
陶芸品というと落ち着きのある色のイメージだったが、湯町窯さんで見た作品は色鮮やかなものが多く驚いた。窯主の福間さんの昔ながらの職人気質と、それでいて本当のおじいちゃんのような暖かさが作品にも表れているなと思った。
島根大学 伊藤薫
おもっつぁんを繋ぐのぼせもん 吉岡孝久さん