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紙芝居で地域活性

紙芝居作家 白根園子さん

心にしみる紙芝居

新しいものにすぐ目が移る現代人。そんな私たちに、既存のものや歴史の魅力を白根さんは紙芝居を通して呼び起こしてくれる。彼女の作品には、自身の経験や思い出を題材にしたものが多くある。これらの作品は、過去のものが消えていき、次から次へと新たなものが登場する現代に逆風を吹かせる。白根さんに作品を読み聞かせして頂いた時、作品一つ一つに強いメッセージが込められていて、僕は胸が熱くなった。

子どもたちに伝えたくて

彼女は茅葺屋根、蔵、井戸などがある昔懐かしい家で育った。その影響から古き良きものや昔の家に愛着を抱いている。しかし、時代とともに過去のものが消えたり移り変わったりしている現状がある。「このまま消えていくのでは未来の子供たちは寂しい、娘に歴史として残してやりたい」その思いで彼女は紙芝居を書き始めた。また、前の仕事が合わず体調を崩してしまい、仕事を辞めたことも要因の一つにあった。ボランティアで社会とつながることが好きで、当初は娘さんと一緒に介護施設の年配の方に読み聞かせを行っていた。そして、今は一人で 活動しているが、ボランティアで紙芝居を演じてくれる方もいる。

お気に入りの作品は何ですか?

彼女のお気に入りの作品は『のんこのあくだれ鬼たいじ』だという。その理由は、この作品は新人賞を受賞した作品ということで特に思い入れが強いからだそうだ。この作品の主人公の「のん子」というのが園子さん自身で、幼少期当時の生活が色濃く伝わってくる作品となっている。また、家族の間は何があっても愛情で結ばれているというのを見ている人に教えてくれる。そして、他にも白根さんの娘さんが小学生の頃に書いた『にじのむこうのたからもの』やグランプリを獲得した『たまごに目鼻のきみのさん』も好きな作品だそうだ。

過去の思いを未来に結ぶ架け橋

今後どのような活動を行っていきたいですか?という質問に白根さんは「地域が廃れていくのを防ぐため、自分の身の回りからみんなが過ごしやすい空間を作っていきたい。」と語る。さらに「地域の人、特に子どもとはこれからも関わり、また戻ってきたくなるまちづくりをし、まちの息吹を取り戻したい。その活動の一つとして紙芝居の活動を行っていきたい」と続けた。そして、自身の過去の思い出や反省を顧みるために書き始めた紙芝居も今では多くの人に影響を及ぼすものとなった。彼女の作品はこれからも影響を与え続け、過去の思いを現代に引き継ぎ今後もさらに人々を魅了していくだろう。

【編集後記】

白根さんの演じる紙芝居の世界に僕は引き込まれました。ひとえに紙芝居といっても本当に奥が深いものであると感じました。僕も松江出身なので白根さんのようにこの地に土着して貢献したいと改めて感じるとともに、これまでにこの地で活躍されていた方々に感謝しなくてはならないと思いました。また、お話を伺うまで、古いものに使えないというレッテルを張り、軽視していた自分がいました。新しいものばかりに目を向けるのではなく、そういった過去の遺産の中から何か先人の知恵を学んでいきたいそう思いつつこの記事を締めたいと思います。    島根大学 藤井晴朗

アートディレクター 平本映子さん


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