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誰もが住みやすい街へ

NPO法人プロジェクトゆうあい 事務局長 田中隆一さん

福祉の進む社会

 近年、多くの公共施設がバリアフリー化されたり、様々な商品がユニバーサルデザインを意識して作られたりするなど障がいを持つ人への配慮が社会的に重要視されている。そんな社会の中、松江で障がい者支援に尽力しているのがNPO法人「プロジェクトゆうあい」の事務局長を務めている田中隆一さんだ。

 「ゆうあい」は松江市内のバリアフリーマップの制作や障がい者の就労支援などの活動をしており、田中さんはそのほとんどに責任者として関わってきた。

 田中さんと「ゆうあい」

 田中さんは「プロジェクトゆうあい」の設立当初から関わっている。設立した当時の話を聞いてみると障がい者支援に対して関心があった人たちの有志によって活動を始めたそう。初期のメンバーは10人にも満たず、1つのフロアでの活動をしていた。しかし、障がい者支援がその当時から社会のニーズにも合っていたこともあり事業を拡大することが出来た。

 「ゆうあい」は障がい者の働き口にもなっていて従業員のうち3分の2程度のおよそ40人が何らかの障がいをもっている。田中さんは障がいを持つ人と共に仕事をすることについて「例えば耳が聴こえない人にはコミュニケーションの手段として筆談をし、相手にムリをさせないようにする必要がある。でも、相手にムリをさせないことも一人一人に対応を変えるのも、誰が相手であっても普通のことだからそういう意味では健常者との明確な違いはない」と語る。

 僕は実際に仕事場を見せてもらったが、互いに意見を出し合い、サポートし合いながら誰もが熱心に仕事をしており、働く環境としてとても理想的だと感じた。

これまでとこれから

 「ゆうあい」ではバリアフリーマップの制作や市内のバリアフリー化を役所に提案するなど多くの事業を行ってきた。

 現在、田中さんが力を入れていると語ったのはパソコンのリサイクル事業だ。この事業は障がい者就労支援の一環で、廃棄パソコンの分解や修理といった作業をしている。近々新しく作業場を設ける計画もあり、事業は着実に進展している。

 また、障がい児を受け入れる施設の数が多くはないことを知って2011年からは障がい児預かり事業を開始した。障がいを持つ子どもを育てるには母親がつきっきりになる場合が多い。その手助けをする形で子どもを預かっている。勉強や多人数での活動を通して子どもの能力を伸ばすとともに、なにより子ども達に楽しんでもらうことを大事にしているそうだ。

 今後の展望について田中さんは「背伸びをせずにしっかりと今やっていることを形にしていきたい」という。松江市はバリアフリー化されていない場所が残っており、まだまだ障がい者にとって不便なことがある。しかし、田中さんたちの活動により、松江市は1歩ずつ誰もが住みやすい街へ近づいていると、そう感じた。

【編集後記】

 今回は1回生2人での取材で緊張したけれど、預かり所に来ていた子ども達が元気にあいさつしてくれたり、職員の方々も和やかだったこともあり緊張がほぐれました。田中さんもわざわざ多くの資料を用意してくださりとても説明がわかりやすかったです。

 「ゆうあい」が制作するバスマップやバリアフリーマップは駅や書店にあるので機会があれば是非手に取ってみてはいかがでしょうか。普段は気づかなかった配慮が見えてくるはずです。

島根大学 内田悠太

日本エコビレッジ研究会代表 召古裕士さん


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