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デザインを追い求めたその先に

デザイナー 平本映子さん

平本映子というデザイナー

「私は普通にいるデザイナーではない。」そう語るのは、長い間島根のデザイン業界を先導してきたデザイナーの平本映子さん。普通のデザイナーは1つのものに傾倒しているのに対し、平本さんはこれまでに浮き彫り細工のレリーフやモニュメント、陶、木などの素材を活かしたクラフト、ロゴマークを始めとするグラフィックデザインなど幅広い数多くのデザインを創りあげてきた。なんと、くにびきメッセのホールの壁面レリーフや同地におけるモニュメント、島根ワイナリーのシンボルマークなど、私たちが日頃よく目にするものを創ったのがこの平本さんだ。

平本さんの業績

数えきれないほど多種多様なデザインを創ってきた平本さんだが、忘れられない作品がある。それが、出雲空港にかつてあった壮大なモニュメント、『神々の門』だ。出雲大社の千木と築地松をイメージしたもので、鉄骨組み、黒御影石造りの雄大なデザインは周囲の人からも親しまれていたが、滑走路拡張のために崩さざるを得なくなった。残したいという思いが強かったが、残すためには莫大な費用がかかったらしい。平本さんにとってこれは苦渋の決断だった。

平本さんは作品展の企画、立案、運営をするアートディレクターをしていたときもある。島根県立美術館の日本工芸展では積み上げた人脈を活かし、外国の方や人間国宝など各界の著名人を呼び集めて会場を賑わせた。こうして平本さんは島根には必要不可欠な存在となったのである。

若い人に伝えたいこと

「何事も楽しむこと。くだらないと思ったら終わり。」はじめ、一畑百貨店に就職した平本さんは男所帯の中で周りに負けないように目一杯仕事をした。そこでデザイナー人生は始まった。ここまでくるのにたくさんの苦悩を強いられた。そこで諦めずに楽しむことで自分を奮いたたせ、数々の偉業を成し遂げてきた。平本さんは常に疑問を持つことが大事だと語る。そのために大切なことは若いうちから自分にお金をかけて目一杯勉強をして世の中の流れを掴んでいくことだそうだ。平本さん自身もたくさんの経験をしようと日本各地に出向き、40年間で全県を回った。今でも時折東京に向かい、そこの商品を見て現在の流行が何なのかを調べているという。時代は移り変わっている。デザインがついていけないほどに。その中でいかに若い人が社会に出て、世の中の流れを知り、新しいことを提案していくかということがこれからにおいて最も重要であると語った。

デザインの力

平本さんにとってデザインとは゛生活そのもの゛だという。だから、デザインが施されたものを見た瞬間に持ち主の人柄や考え方が分かる。気持ちが乱れていると形が歪になったりする。自分がこうありたいと思うデザインを持つことも大事らしい。私はその面でデザインというものは不思議な力を持っているように感じた。

【編集後記】

平本さんの持つ穏やかな雰囲気が印象的でした。仕事で起きた数々の体験談を聞き、当時の苦労や喜びを肌で感じることができました。平本さんのご自宅には趣向が凝らされた家具やお皿などが飾らていて、やはりデザインは人なんだと強く感じました。    

島根大学 鈴木麻路

NPO法人プロジェクトゆうあい 事務局長 田中隆一さん


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